職場の同僚とのコーヒー休憩のとき、国際情勢や気候変動といったニュース系の話題、また最近観たエンタメの感想などに混じって、けっこう頻繁に家庭菜園がらみの話も登場する。

つい先日、休憩時に集まっている数人の同僚たちは「家の中や庭によく出る昆虫」について盛り上がっていた。話の主役はクモで、daddy long-legs spider(足長おじさん)という俗称のクモがどの家にもいることがわかった。日本語では「ユウレイグモ」。半透明の小さな体に細長い脚が特徴で、家の天井や壁の隅に巣を張るやつだ。私がダイニングルームの片隅でパソコンに向かっているとき、ふと壁に目をやるとこのクモがいるのだが、人間には無害だし、コバエなどを食べてくれるそうなので放っている。同僚たちも見て見ぬふりをしているようだ。

その昆虫の話題から、庭に勝手に生えている毒を持つ草花の話に移り、それからミントやローズマリーなど、一束庭のどこかに植えると何の手入れもしなくても強く生き抜いてくれるハーブの話になった。

ここで私は「きのう、今年初めてのじゃがいもの収穫をした」と報告をした。たまたまこの同僚たちは家庭菜園をしていないため私は得意顔だったが、「じゃがいも以外には何を育ててるの」と聞かれ、すぐに鼻がへし折られた。数年前に植えて今では藪のようになっているローズマリーぐらいしかないからだ。ハーブは家の中でも今年は育ててはいない

数年前に庭のレイズドベッド raised bed(上げ床式の花壇)の片隅に植えたローズマリー。今や完全にベッドを占領している。春にはこうして花も咲き、この花も食べられる。

ともかく、夫が4月末に植えた種芋は、雨の少なかった今年の夏を無事に乗り越えてくれた。夏に白い花が咲き、それから数週間して早や茎が枯れてきたころに、地面の中のじゃがいもが大きく育ってくる。

じゃがいもを植える準備として、わが家の細長い庭の中央部分を何列かに分けてならす。

Sarpo Mira という品種の種芋を使用。この種は「じゃがいも疫病 late blight」に対し強い抵抗性をもつことで知られている。

立派に茂るじゃがいもの葉。

種芋 5、6個分からこれだけのじゃがいもが採れた。

大きめのじゃがいもを使ってグラタンを焼きました。

今回収穫したのは家の建物に一番近いところに植えたじゃがいもで、他の列よりも早く葉や茎が枯れて、もうこれ以上育たないと夫は見て、収穫に踏み切ったそうだ。小ぶりのじゃがいもが多かったが、今回採った量の4倍がまだ庭に植わっているので、あと数週間かけて少しずつ収穫をする予定だ。

日本の家庭菜園事情についてネットで検索してみると、京都にある「タキイ種苗株式会社」が2025年1月に実施した調査があった。全国の20代から60代の男女の家庭菜園経験者600人を対象に、経験年数、菜園場所、野菜を育てる魅力などについて質問している。

「一度でも育てたことのある野菜」を聞いた質問では、初心者から上級者(5年以上の経験者)に問わず、以下の野菜が上位に挙がっていた。

  • トマト
  • きゅうり
  • なす
  • ピーマン
  • ネギ
  • 枝豆
  • オクラ
  • じゃがいも

中でもトマトがダントツの一位で、7割以上の人が育てたことがあり、成功率も高い。じゃがいもはというと、家庭菜園経験の長い上級者になると4割ほどの人が育てたことがあるようだ。 

アイルランドでの同様の調査は私には見つからなかったが、コークにある老舗のガーデンセンターのウェブサイトで「アイルランドでの野菜を育てるための初心者向けガイド」という記事が見つかった。そこでは、アイルランドの気候に合い、「生産性が高く、栽培が簡単で、初めて栽培する人にとってもやりがいがある」として次の作物が勧められていた。

  • Lettuce レタス
  • Kale ケール(キャベツやブロッコリーのような葉野菜)
  • Chard スイスチャード(赤や黄色の茎が特徴のビーツの仲間)
  • Peas グリーンピースやスナップエンドウ
  • Beans つるなしインゲンや枝豆
  • Tomatoes (in a greenhouse) トマト(温室で)
  • Herbs ハーブ

やはり気候の差なのだろう、日本とアイルランドでは育てやすい野菜は違うことが一目瞭然だ。日本では4月から9月の暖かい時期にトマトやピーマンが育つが、アイルランドの気候ではトマトは「温室で」育てる必要がある。

このアイルランドの「初心者向けガイド」では、じゃがいもはリストには挙がっていなかったのが不思議だった。育てやすいが、どこでも安く手に入るから自分でわざわざ育てる意味がないからだろうか。

ともあれ、わが家ではこの秋は自作のじゃがいもを存分に味わうことにする。