アイルランドは 2026年下半期、つまりこの7月から年末まで、欧州連合(EU)理事会の議長国を務める。

EU理事会(Council of the EU)とは EU加盟国の閣僚が出席する機関のことで、6カ月ごとに加盟国が交替で議長国を務めることになっている。閣僚会合の議長となり、イベントなどの運営もするのが議長国の役目。アイルランドが議長国のあいだの半年間に、首脳会談が 2回、閣僚会議が 22、そして 250を超えるイベントが予定されている。

そうしたイベントや会議の主な会場となるのは、首都ダブリンにあるダブリン城 Dublin Castle と、ファームリー Farmleigh と呼ばれるアイルランド政府の迎賓館だ。普段は一般公開され観光客もよく訪れるこの 2つの施設は、議長国のあいだは一般公開はされていない。

早くも 6月下旬からダブリン城の門は閉ざされ、小さな通路門には警察官が常駐して警備にあたるようになった。

ダブリン城の敷地内には、ヘリコプターの離着陸のできる円形の庭 Dubh Linn Gardens がある。普段は市民の憩いの場となっているこの庭も入場禁止。同様に敷地内にあるチェスター・ビーティー博物館 Chester Beatty も半年間の休館中だ。

まだ敷地内に入れた今年前半には、各国の政府の要人が訪れても恥ずかしくないよう、数カ月かけてあちこちで塗装や舗装を行っていた。

ダブリン城のすぐ外にある広場には、アイルランド語で「ダブリン」を表す Baile Átha Cliath の文字のモニュメントが最近できた。この孔雀の像が置かれていたのは数日間だけ。

Dawson Street の官公庁の前には Dublin の文字のモニュメントも。

EU(欧州連合)には主に3つの主要な意思決定機関があり、それぞれ役割と議長が異なる。聞き知ってはいたが、名前が似ているのでややこしい

  1. 欧州理事会(European Council) :  EU加盟国の国家元首や首相などの政府の長で構成される最高意思決定機関。欧州連合の全体的な政治指針と優先課題を決定し、「EUサミット」または「EU首脳会議」と呼ばれることも。現在の理事長はポルトガル首相のアントニオ・コスタ António Costa 氏。
  2. 欧州議会(European Parliament): 直接選挙で選ばれた議員で構成される機関。現在の議長はマルタ出身のロベルタ・メツォラ Roberta Metsola 氏。
  3. 欧州連合理事会(Council of the EU): 加盟国の分野別閣僚(大臣)によって構成される機関。2026年7月から12月までの議長国はアイルランド。

今年上半期の議長国はキプロスだったそうだ。アイルランドは役目を終えると 2027年の上半期の議長国リトアニアにバトンタッチする。来年下半期はギリシャが議長国だ。

アイルランドが European Union(EU)に加盟したのは今から 50年以上前の1973年。初めて EU理事会の議長国になったのは 1975年で、以来、1979年、1984年、1990年、1996年、2004年、そして2013年と議長国を務めた。今回で 8回目だと知って驚いたが、以前は加盟国自体が少なかったので頻繁に順番が回ってきたようだ。

前回議長国だった 2013年のときのことは、当時ニュース等で話題になったので覚えている。ダブリン城は休館していたような記憶があるが、それでも敷地内には入れたし、警備も今回ほどものものしくはなかった。この数年で世界情勢が様変わりしたことが確実に警備に影響している。

7月1日、議長国就任の式典がダブリン城で行われた。ダブリン城近くは一般車やバスの侵入が禁止となり、出勤にいつもより時間がかかってしまった。式典の様子をテレビのニュースで見ると、アイルランド首相のミホル・マーティン、アントニオ・コスタ 欧州理事会議長に続き、ウクライナのゼレンスキー大統領の演説があり、ウクライナの国旗も掲げられた。

ちょうど式典の最中だったのか、街中では議長国就任に反対する抗議デモがあった。デモ参加者たちはダブリン城の外の通りにパレスチナ国旗を掲げて列をなし、「戦争反対、軍事化反対」を訴え、EUのイスラエル制裁を求めた。

抗議デモが始まったお昼どき、私はちょうどこの辺りを歩いていた。小規模なデモで、小競り合いなどの混乱は見受けられなかった。