五輪や万博の「レガシー legacy」
冬期オリンピック2026 がイタリアのミラノとコルティナ・ダンペッツォで開催中だ。私の周囲ではしかし、五輪への関心はほぼゼロ。日本のニュースを追っていないと、誰の何に注目すべきかわからない。
アイルランドのニュースサイトを見ても、五輪の特設ページは見当たらない。スポーツのページではラグビー、サッカー、GAA(アイルランドのスポーツ)というお決まりのスポーツばかりが取り上げられている。
「日本ではフィギアスケートが人気だよ」と友人に話をもっていっても、「へえ、何で」と返されて返事に困ったりしている。
アイルランドは、欧州連合(EU)の人口100万人以上いる加盟国の中で、恒久的なアイススケートリンクをもたない唯一の国らしい。雪山も一年を通して使えるアイススケートリンクもないのだから、冬季スポーツへの関心が低いのはもっともだ。
そんなアイルランドのオリンピック連盟が先月、ダブリンの南部に仮称「ダブリン・アリーナ」と呼ばれる施設を作ることを発表した。何と 1億9千ユーロ(約346億円)規模の開発計画で、完成すれば国内初の常設アイススケートリンクを2つ擁することになり、アイススケート、アイスホッケーなどの氷上スポーツの拠点になるそうだ。
スキーは? 私は子ども時代、そして大学時代は毎年のようにスキーをしていたが、アイルランドに持ってきたスキー服はこの20年以上段ボールに入ったまま。スキーやスノーボードをしたいならイタリアやスイスなどのヨーロッパ大陸で、という状況は今後も変わらないかもしれない。

1月から雨続きのダブリンでは、わが家の最寄りのバス停の後ろの原っぱに池ができてしまいました。

バス停までの通り道に咲く黄色い水仙は、この時期いつも目を和ませてくれる。
日本のメディアで五輪のふり返りやまとめ的な話題を見ていると、「五輪」と「レガシー」という言葉がいっしょに使われていることが多いことに気づいた。いくつかの新聞社のニュースサイトで「レガシー」とキーワードを入力すると、見出しに「レガシー」が入っているのはほとんどが五輪か万博関係の記事だった。毎日新聞デジタルには「パラリンピックレガシー」という連載まであった。
- 歴史、変遷に迫る 「万博のレガシー」展 14日から近代美術館/和歌山(毎日新聞)
- パリのセーヌ川、水質改善で100年ぶりに遊泳解禁 五輪のレガシー(朝日新聞)
- 札幌五輪のレガシー 2施設が引退へ スケート場、ジャンプ台を新設(朝日新聞)
- 万博レガシー 創造の軌跡(読売新聞)
- 万博レガシーの「KANSAI」ブランド活用 関西財界セミナーで議論(日本経済新聞)
レガシー legacy という言葉は、今ではすっかり日本語になっているようだ。でも本当にみんなわかってる? 記事によっては、本文中に「レガシー(継承)」「レガシー(遺産)」と訳が書いてあるのを見ると、まあその方が親切だろうと思う。
私はこの言葉、アイルランドで働き始めてしばらくするまで使ったことがなかった。
チームリーダーのような立場になってから、他の企業の同じ立場の人たちと話していたときに、レガシーという言葉が飛び交うことがあった。
「It’s the legacy we inherited… こういう legacy 引き継いじゃってるよね…。」
前任者からいやがおうにも引き継いでしまった「負の遺産」について、こんなのもある、とお互いに例を挙げてため息をついた。故障ばかりしている古いコピー機、面倒な仕事の手順、他の部署との微妙な関係性等々、negative legacy は挙げたらきりがなかった。
「Leave a legacy」は文字どおりの「遺産」という意味でよく使う表現だ。遺言で自分の遺産の一部を文化施設、教育施設、慈善団体などに寄付をすることで、美術館のパンフレットなどで「友の会に入りませんか」というページの次に大きく扱われていたりする。

2024年9月、トリニティ大学の「ケルズの書」併設の特別展示。W・B・イェイツの姉妹たちの作品がアイルランドの美術デザインに与えた影響が「Legacies」という言葉を使って紹介されていた。