トースターの置き場所とアイルランド大統領選
私はワルシャワで開催中のショパンコンクールで盛り上がっているが、アイルランドでは7年に一度の大統領選が迫っている。
アイルランドの政治のトップは、政府の長である首相 Taoiseach(ティーショック)。大統領は国家元首として主に儀式的な職務を行うが、下院の解散の拒否など、いくつかの留保権限を行使することもできる。
2期目の任期が来月で終わるマイケル・D・ヒギンズ大統領は、2011年に国民の直接選挙によって初めて大統領になった。ゴールウェー出身の彼は、大統領になる以前は労働党の政治家として主に文化面の取り組みに力を入れ、アイルランド語(ゲール語)の番組を主軸とするテレビ局の創設などに尽力した。大統領になってからも、経済や環境問題、人権、国際問題に対して声を上げ続けている。考えが古いと批判されることはあるが、真摯な人柄がその妖精(?)のような風貌とあいまって、皆から尊敬され愛される存在だ。
ヒギンズ大統領は詩人、学者、人権運動家でもある。ダブリンの「文学博物館」MoLI(Museum of Literature Ireland)にある、アイルランドの文学作品からの引用を集めた展示には、ヒギンズ氏の詩集からの引用も。「A shared space, Of love and care, Above all for the stranger(愛と気遣いを共有した空間、とりわけ見知らぬ人のために)」。
この大人気のヒギンズ大統領の後釜が誰になるか。3人の候補者がいたのだが、そのうちの一人がスキャンダルにより出馬を退くこととなったため、60代の女性二人の候補者の事実上の一騎打ちとなっている。
キャサリン・コノリー Catherine Connolly は無所属の下院議員(国会議員と同等)で、臨床心理士、法廷弁護士 barrister でもある。シン・フェイン党、労働党、社会民主党など複数の政党から大統領選の支持を受けている。

ヘザー・ハンフリーズ Heather Humphreys は一貫して統一アイルランド党 Fine Gael(フィナ・ゲイル)の政治家であり、所属政党からの支持を受けている。

ジム・ギャビン Jim Gavin は元ダブリンのゲーリック・フットボールの監督。過去に家主として貸していた物件の元借主が、家賃を3300ユーロ謝ってギャビン氏に過払いしたが、ギャビン氏は約束した返金をまだしていないと主張し、スキャンダルとなった。アイルランド共和党 Fianna Fáil(フィアナ・フォイル)から後押しを受けていた彼は、候補者の公式指名の後で出馬を退いたため、選挙活動は撤退したものの、投票用紙に彼の名前は残る。

