残念な観光地、テンプルバーの見どころ
今月、ダブリンの観光地「テンプルバー」がアイルランドのニュースでちょっと話題になった。
世界中の主な観光地のネットのレビューを統計した Nomad eSlim が、「Top 50 Tourist Traps of 2025」、つまり今年の「がっかりした観光地トップ50」を発表。そのワースト上位にテンプルバー Temple Bar が挙げられていたからだ。
テンプルバーは、トリニティ大学の正面の交差点カレッジ・グリーン College Green から Dame Street に続く道とリフィー川とのあいだにある地域で、この地図では細いオレンジ色のエリア。(地図出典はテンプルバーにあるパブ Oliver St. John Gogartys のウェブサイト。夫は学生時代にこのパブでバイトをしていて、観光客にギネスビールを注いでいたそうです。)
日曜の朝 11時ごろに撮った写真。歩道もこうして観光客だらけです。正面奥がトリニティ大学、左手の支柱のある建物は Bank of Ireland(地図では 4番)、テンプルバーは左手の奥に広がる。
「Top 50 Tourist Traps of 2025」の同率ワースト1位は、サンフランシスコのフィッシャーマンズ・ワーフ、そしてサウスダコタ州のウォール・ドラッグストアという店。
ワースト2位はスペイン、バルセロナ旧市街のランブラス通り。
そしてワースト3位はわがアイルランド、ダブリンの街中にあるテンプルバー Temple Bar。「混雑しすぎているし、値段も高く、過大評価されている」と総括されていた。
Known for its cobbled streets, colorful pubs, and exciting nightlife, the area draws huge crowds seeking an “authentic” Irish experience. But for many visitors, the reality doesn’t live up to the hype. Complaints range from sky-high prices and rowdy stag parties to a lack of genuine local culture. 石畳の道、カラフルな店構えのパブ、そして刺激的なナイトライフで知られるこのエリアは、「本物の」アイルランド体験を求めている多くの人々を惹きつけている。しかし、多くの観光客にとって、現実は期待に応えるものではない。高すぎる物価、騒々しいスタッグパーティー、そして本物の地元文化の欠如など、様々な不満が寄せられている。
ごもっとも。ダブリンに住む人たちは、テンプルバーではまず遊ばないし、観光客目当ての店はなるべく避ける。
もともとこの地域は、9世紀半ばにヴァイキングが定住したところで、近くのダブリン城には当時のヴァイキングの防衛施設の跡が遺っている。テンプルバーという名前は、1600年代半ばにこの辺りに大邸宅を構えていたイギリスの外交官ウィリアム・テンプルにちなんだもの。今ではたくさんのパブ、レストラン、ギフトショップが建ち並び、細い路地や広場が点在する観光地となっている。
アイルランド音楽が好きな人なら、テンプルバーにあるパブの多くでミュージシャンの生の演奏を聴くことができるので、ビール一杯10ユーロくらい出しても雰囲気を味わうにはいいかもしれない。
地元民がテンプルバーの中で行くところはどこかな、と考えてみると、私のよく行く映画館(カフェ・レストランも併用)IFI(Irish Film Institute、先の地図では7番)、昔ながらのスタイルのパブ、無料で楽しめる文化施設など、けっこう思いついたので、少しご紹介します。
先の地図では 5番の Central Bank(中央銀行)にあたる広場。中央銀行は現在は移転している。写真は珍しく雪が降った日に撮ったもの。写真中央奥にある老舗パブ Foggy Dew には地元民もよく行く。
地図 9番の Dublin Castle(ダブリン城)側からテンプルバー方面を向いて撮った写真。左手には緑の郵便ボックス(北アイルランドに行くと赤になる)があり、観光馬車も停まっている。中央の Brogans Bar では、私の元同僚のアイルランド人が「ダブリンで一番おいしい」と太鼓判を押したギネスビールが飲める。
日本食レストラン DARUMA など小さなレストランが集まる Parliament Street は近々、歩行者天国になる予定だ。この7月から週末のみ試験的に歩行者天国化されていて、 家族向けのイベントで盛り上がっている。
その Parliament Street の角にあるパブレストラン Turk’s Head は、20年ほど前に私の友人がパートナーとなる男性と出会った場所。当時は地下がクラブになっていたんだっけ。一度閉店したが、数年前に改装して再オープン。おしゃれで居心地のよい空間になり、仕事帰りのちょっとした飲み会や待ち合わせにぴったり。
シネイド・オコナーが若い時に働いていたことで有名なカフェ Bad Ass Café もあるこの広場では、 時々屋外マーケットがやっている。
地図の 6番と7番のあいだにある広場では、毎週土曜日に Food Market が開催される。雨天時には 4本ある大きな柱の上にあるパラソルが開く。Photo Museum Ireland では小規模な写真展が無料で公開されているので、時間つぶしにもちょうどよい。
テンプルバーでお土産物を買うならどこで買うか。バラまき用の小さなものやチョコレート、ギネス関連グッズを扱う店は何軒かある。でもどうせなら、アイルランド在住のアーティストの作るアクセサリーやアートも見てほしい。
テンプルバーの中心、この辺りにギネスグッズなどを売る店がいくつかある。
テンプルバーの西側の Essex Street にある、アイルランドのデザイナー数人が共同運営をしているギフトショップ Design Lane は私のおすすめ。
仲介業者がいないので、大量生産のできない手作りの作品のわりにはお値段も手ごろ。アーティスト本人がお店にいることも多く、私がいくつか買ったことのあるガラス細工のジュエリー作家は常連スタッフ。ここでよくおしゃべりをする。
同じ通りの先には The Bakery というイートインもできるベーカリーがあり、周辺で働いている人たちが大振りで素朴な味のマフィンやケーキをほおばっている。その隣の角の店は Gutter Bookshop という本屋。オスカー・ワイルドの劇の有名なセリフ「We are all in the gutter, but some of us are looking at stars.(俺たちはみんなドブの中にいる。でもそこから星を見上げている奴もいるんだ)」を引用した店名だ。アイルランド作家の本の品ぞろえが充実している。